借地売却の取得費はいくら?譲渡所得の計算方法と取得費が不明な場合の考え方を解説
借地権や借地上の建物を売却したときの取得費とは、借地権や建物を取得するためにかかった費用のことです。
借地権売却で譲渡所得にかかる税金は、売却代金そのものに課税されるわけではなく、売却代金から取得費と譲渡費用を差し引いた「譲渡所得」をもとに計算される仕組みです。
取得費には、借地権を取得するときに支払った権利金、借地権の購入代金、取得時の仲介手数料、登記費用などが含まれる可能性があります。一方で、売却時に支払った仲介手数料や譲渡承諾料、名義書換料などは、取得費ではなく譲渡費用として整理する場合があります。
なお、借地上の建物もあわせて売却する場合、建物部分の取得費は、取得時の購入代金などから所有期間中の減価償却費相当額を差し引いて計算します。そのため、建物の購入代金や建築費が分かる場合でも、その金額をそのまま取得費にできるとは限りません。
取得費が分からない場合は、売却代金の5%相当額を概算取得費として計算できます。ただし、実際に支払った取得費を証明できる資料がある場合は、概算取得費よりも実額取得費を使った方が譲渡所得を抑えられる可能性があります。
特に、昔から所有している借地権や相続した借地権では、契約書や領収書が見つからず、取得費の確認が難しくなることがあります。そのため、借地契約書、更新契約書、権利金や更新料の領収書、売買契約書、登記費用の資料、通帳などをできるだけ整理しておくことが望ましいといえます。
この記事では、借地売却の取得費の考え方、譲渡所得の計算方法、取得費に含まれる可能性がある費用、取得費が不明な場合の対応、相続した借地権の取得費、必要書類、計算例を解説します。
- 取得費に含めてよい費用と、譲渡費用として分けるべき費用の見分け方
- 取得費が分からないときに、概算取得費(売却代金の5%)を使うべきか実額取得費を探すべきかの判断材料
- 相続した借地権を売却する場合に、被相続人の資料をどこまで遡って探せばよいか
- 権利金・更新料・譲渡承諾料・名義書換料など、扱いに迷いやすい費用を税理士に相談する前に自分で整理する方法
- 確定申告に向けて、今のうちに集めておくべき契約書・領収書の具体的なリスト
読み終えるころには、借地売却で取得費として何を確認すべきか、取得費が分からない場合にどう考えるべきか、税理士や税務署へ相談すべきポイントを整理できる状態を目指します。
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借地売却の取得費とは
借地権や借地上の建物を売却したときの取得費とは、借地権や建物を取得するためにかかった費用のことです。借地売却にかかる税金は、売却代金そのものに課税されるわけではなく、売却代金から取得費と譲渡費用を差し引いた「譲渡所得」をもとに計算される仕組みです。
取得費には、借地権を取得するときに支払った権利金、借地権の購入代金、取得時の仲介手数料、登記費用などが含まれる可能性があります。一方で、売却時に支払った仲介手数料や譲渡承諾料、名義書換料などは、取得費ではなく譲渡費用として整理する場合があります。
また、借地上の建物も売却する場合は、建物部分の取得費に注意が必要です。建物の取得費は、購入代金や建築費などから所有期間中の減価償却費相当額を差し引いて計算するため、取得時に支払った金額をそのまま使えるとは限りません。
取得費が大きいほど、譲渡所得を抑えやすくなる可能性があります。逆に取得費が分からず少なく計算されてしまうと、その分だけ課税対象となる譲渡所得が大きくなり、税負担が増える可能性があります。そのため、借地権や建物を取得したときにどのような費用を支払ったかを把握しておくことが、税金計算の出発点になります。
取得費は借地権や建物を取得するためにかかった費用を指す
借地売却における取得費とは、借地権や建物を取得するために支払った費用のことです。譲渡所得を計算するときに、売却代金から差し引く項目の一つにあたります。
取得費に関係しやすい代表的な費用には、借地権の購入代金や権利金、取得時に支払った仲介手数料、登記費用などがあります。これらは、借地契約書や売買契約書、領収書などの資料で支払いを確認できると、実額取得費として整理できる可能性があります。
ただし、すべての費用が必ず取得費になるわけではありません。支払った時期や目的、契約内容によって扱いが変わる可能性があるため、領収書や契約書を確認しながら一つずつ整理していくことが望ましいといえます。
領収書や契約書がない費用は、支払った事実の証明が難しくなる可能性があります。古い借地権では資料が見つからないこともあるため、判断に迷う場合は税理士や税務署へ確認しながら進めることをおすすめします。
取得費が大きいほど譲渡所得を抑えやすい
借地権売却で譲渡所得にかかる税金は、売却代金そのものではなく、売却代金から取得費と譲渡費用を差し引いた「譲渡所得」をもとに計算される仕組みです。
つまり、取得費を多く計上できるほど、課税対象となる譲渡所得は小さくなる可能性があります。反対に、取得費の根拠資料が見つからず少額にしか計算できない場合は、譲渡所得が大きくなり、税負担が増える可能性があります。
取得費が不明な場合には、売却代金の5%を「概算取得費」として使う考え方があります。ただし、実額取得費が5%相当額を上回る場合は、概算取得費を使うと譲渡所得が大きくなることもあり、結果として譲渡所得が膨らみやすい点には注意が必要です。概算取得費の考え方については後述します。
取得費が大きい場合でも、税金が必ずゼロになるとは限りません。所有期間や特例の有無によっても税額は変わる可能性があるため、最終的な金額は税理士や税務署へ確認することをおすすめします。
取得費と譲渡費用は分けて整理する必要がある
借地売却でかかった費用を譲渡所得の計算に反映するには、取得費と譲渡費用を分けて整理することが望ましいといえます。取得費は借地権や建物を取得するためにかかった費用、譲渡費用は売却するために直接かかった費用という違いがあります。
たとえば、取得時に支払った仲介手数料は取得費に関係する可能性がありますが、売却時に支払う仲介手数料は譲渡費用として整理する場合があります。同じ「仲介手数料」という名目でも、支払った時期によって分類が変わる可能性がある点に注意が必要です。
| 区分 | 内容 | 該当する可能性がある費用の例 |
|---|---|---|
| 取得費 | 借地権や建物を取得するためにかかった費用 | 権利金、借地権購入代金、取得時の仲介手数料、登記費用など |
| 譲渡費用 | 借地権や建物を売却するために直接かかった費用 | 売却時の仲介手数料、譲渡承諾料、名義書換料、売却のための解体費など |
譲渡承諾料や名義書換料は、取得費と混同されやすい費用です。これらは借地権を売却するために地主へ支払う費用であるため、譲渡費用として確認する場合がありますが、契約内容によって扱いが変わる可能性もあるため、迷う場合は税理士へ確認することをおすすめします。
取得費が不明な場合は概算取得費を使うことがある
昔から所有している借地権や相続した借地権では、取得時の契約書や領収書が残っておらず、実額取得費を証明できないことがあります。取得費が不明な場合には、売却代金の5%相当額を「概算取得費」として計算できる場合があります。
国税庁の案内でも、土地建物が先祖伝来のものであるとか、買い入れた時期が古いなどのため取得費が分からない場合には、売った金額の5パーセント相当額を取得費とすることができるとされています。また、実際の取得費が売った金額の5パーセント相当額を下回る場合も、売った金額の5パーセント相当額を取得費とすることができるとされています。なお、これは国税庁が示す一般的な取り扱いであり、個別の状況によって適用可否が変わる可能性があるため、最終的な判断は税理士や税務署へ確認することをおすすめします。(参考:国税庁 No.3258 取得費が分からないとき)
概算取得費は、契約書や領収書を探したうえで、それでも取得費が分からない場合の選択肢の一つです。自己判断ですぐに概算取得費を使うのではなく、まずは借地契約書、権利金や更新料の領収書、通帳、過去の確定申告書控えなどを探すことをおすすめします。相続した借地権の場合は、被相続人が残した資料も確認しておくとよいでしょう。
実額取得費:契約書や領収書などの資料で証明できる、実際に支払った取得費を使う方法です。資料がそろえば、概算取得費より譲渡所得を抑えられる可能性があります。
概算取得費:取得費が不明な場合に、売却代金の5%相当額を取得費として計算する方法です。実額取得費より小さくなりやすく、譲渡所得が大きくなる可能性があります。
借地売却で譲渡所得を計算する方法
借地権や借地上の建物を売却したときの税金は、売却代金から取得費と譲渡費用を差し引いた「譲渡所得」をもとに計算される仕組みです。取得費が分かる場合は実額取得費を使い、取得費が不明な場合は概算取得費を検討します。
譲渡所得の計算では、取得費や譲渡費用に加えて所有期間も税率に影響する要素になります。ここでは、取得費が分かる場合と不明な場合それぞれの計算の考え方、所有期間による税率の違いについて整理します。
譲渡所得は売却代金から取得費と譲渡費用を差し引いて計算する
借地売却における譲渡所得は、売却代金から取得費と譲渡費用を差し引いた金額として計算される仕組みです。売却代金そのものに課税されるわけではなく、利益にあたる部分が課税対象となる点は前述の通りです。
売却代金 − 取得費 − 譲渡費用 = 譲渡所得
これは、譲渡所得を試算するための基本的な考え方です。特例や特別控除を適用できる場合は、課税対象となる譲渡所得の金額が変わることがあります。
この式を使って試算するには、売却代金のほかに、取得費と譲渡費用それぞれの根拠資料を整理しておく必要があります。取得費と譲渡費用を二重に差し引いたり、混同したりしないよう、契約書や領収書をもとに一つずつ確認することが望ましいといえます。
正確な税額の計算には、これらの情報に加えて特例の適用有無なども関係するため、最終的な金額は税理士や税務署へ確認することをおすすめします。
取得費が分かる場合は実額取得費を使って計算する
借地権や建物の取得費が契約書や領収書で確認できる場合は、実際に支払った金額(実額取得費)をもとに譲渡所得を計算する場合があります。実額取得費を使えると、概算取得費よりも譲渡所得を抑えられる可能性があります。
権利金、借地権購入代金、取得時の仲介手数料、登記費用などのほか、更新料が取得費に関係する場合もあります。ただし、更新料の扱いは契約内容や支払い目的によって異なる可能性があるため、一律に取得費へ含められるとは限りません。更新料の扱いについては後述します。
相続した借地権の場合は、被相続人が支払った取得費の資料を探す必要があります。相続した借地権の取得費については、後の見出しで詳しく整理します。
過去に必要経費として処理済みの費用は、取得費に重ねて含められない場合があります。資料が見つかった場合でも、過去の経費処理の有無は確認しておくことをおすすめします。
取得費が不明な場合は売却代金の5%を概算取得費にできる場合がある
取得費が不明な場合は、概算取得費(売却代金の5%相当額)を使う考え方がある点は前述の通りです。ここでは、資料を探す手順とあわせて確認します。
たとえば、売却代金が3,000万円の場合、概算取得費は3,000万円×5%で150万円となる計算です。これはあくまで国税庁が示す考え方に基づく一例であり、実際の金額は売却代金や適用条件によって異なります。実額取得費が確認できる場合と比べて、概算取得費は小さくなりやすく、その分だけ譲渡所得が大きくなる可能性がある点には注意が必要です。
1
借地契約書、更新契約書、借地権取得時の売買契約書、権利金や取得時の仲介手数料の領収書などを確認します。
2
契約書や領収書が見つからない場合は、通帳や振込明細から支払い履歴をたどれないか確認します。
3
相続した借地権の場合は、被相続人が保管していた契約書や確定申告書控えなどを探します。
4
資料を探しても実額取得費が確認できない場合に、概算取得費(売却代金の5%)を検討する場合があります。
5
概算取得費を使うべきか、ほかの資料で実額取得費を証明できないかなど、判断に迷う点は税理士や税務署へ確認することをおすすめします。
このように、概算取得費はあくまで資料が見つからない場合の選択肢の一つであり、最初から概算取得費を使えばよいというものではありません。まずは資料を探す段階を踏んでおくことが望ましいといえます。
所有期間によって譲渡所得税の税率が変わる
借地権や借地上の建物を売却したときの税率は、所有期間によって長期譲渡所得と短期譲渡所得に分かれる場合があります。取得費や譲渡費用を整理したあとは、所有期間の確認も税額に影響する要素になります。
土地や建物を売却した場合、所有期間は売却した年の1月1日時点で判定され、5年を超える場合は長期譲渡所得、5年以下の場合は短期譲渡所得に区分されます。ただし、相続した資産では被相続人の取得時期を引き継ぐ場合があるため、取得時期の確認が必要です。また、相続した借地権では被相続人の取得時期を引き継ぐ場合があるため、単純に売却時点からの経過年数だけでは判断できないケースもあります。
| 区分 | 所有期間の区分 | 確認資料 |
|---|---|---|
| 短期譲渡所得 | 売却した年の1月1日時点で所有期間が5年以下の場合 | 取得時の契約書、売却時の契約書、登記資料 |
| 長期譲渡所得 | 売却した年の1月1日時点で所有期間が5年を超える場合 | 取得時の契約書、売却時の契約書、登記資料、相続資料 |
税率は税制改正によって変わる可能性があるため、本記事内の情報だけで判断せず、最新の税率や適用条件は税理士や税務署へ確認することをおすすめします。取得費を整理できていても、所有期間や特例の有無によって税額は変わる可能性がある点に注意しましょう。
借地権の取得費に含まれる可能性がある費用
借地権を売却するときに取得費として整理できる可能性がある費用には、権利金や借地権購入代金のほか、取得時に発生した仲介手数料や税金、登記費用などがあります。取得費に含められるかは、費用名だけでなく、借地権や建物を取得するために支払ったものか、過去に必要経費として処理していないかを確認することが大切です。
ここでは、借地権の取得費に含まれる可能性がある費用を一つずつ整理します。同じ名目の費用でも、支払い時期や目的によって取得費に該当するかどうかが変わる場合があるため、契約書や領収書をもとに確認することをおすすめします。
借地権を取得するときに支払った権利金
借地権を取得するときに地主へ支払った権利金は、取得費に関係しやすい代表的な費用です。借地契約を結ぶ際に一時金として支払われることが多く、譲渡所得を計算するうえで確認すべき項目の一つになります。
権利金の支払いを確認するには、借地契約書や領収書に記載された金額、支払い時期を確認します。相続した借地権の場合は、被相続人が支払った権利金の資料を探す必要があります。
過去に必要経費として処理していないかどうかも確認しておくとよいでしょう。資料が見つかった場合でも、扱いに迷う場合は税理士へ確認することをおすすめします。
借地権の購入代金
借地権を第三者などから購入して取得した場合は、その購入代金が取得費に関係する可能性があります。購入時の売買契約書や領収書が、実額取得費を整理するための根拠資料になります。
売買契約書を確認する際は、借地権の購入代金と建物代金が区分されているかを確認することが望ましいといえます。内訳が不明な場合に、自己判断で按分することは避けたほうがよいでしょう。
| 確認項目 | 確認内容 |
|---|---|
| 売買契約書 | 借地権の購入代金、契約日、取引相手の記載 |
| 領収書・振込明細 | 実際の支払いを確認できる記録 |
| 重要事項説明書 | 取得時の権利関係や条件の記載 |
| 建物代金との内訳 | 借地権代金と建物代金が区分されているかの確認 |
| 被相続人の資料 | 相続した場合に確認する取得時の資料 |
相続した借地権の場合は、被相続人が購入したときの資料を探すことが基本になります。資料が見当たらない場合は、概算取得費を検討する場合がある点は前述の通りです。
取得時に支払った仲介手数料
借地権や借地上の建物を取得したときに支払った仲介手数料は、取得費に含まれる可能性があります。ただし、売却時に支払う仲介手数料は譲渡費用として整理する場合があるため、支払い時期で分けて考えることが望ましいといえます。
仲介手数料の領収書や媒介契約書を確認し、取得のために支払ったものかどうかを確認します。通帳の記録と照合できると、支払い目的を整理しやすくなります。
| 区分 | 分類の考え方 |
|---|---|
| 取得時の仲介手数料 | 取得費に含まれる可能性がある |
| 売却時の仲介手数料 | 譲渡費用として差し引く可能性がある |
| 確認資料 | 領収書、媒介契約書、請求書、通帳 |
契約時の印紙税や登録免許税
借地権や建物を取得した契約時に支払った印紙税や、登記に関係する登録免許税は、取得費に含まれる可能性があります。ただし、売却時の契約に貼る印紙税は、取得費ではなく譲渡費用として整理する場合があるため、取得時と売却時を分けて考えることが望ましいといえます。
契約書や登記費用の明細を確認し、支払い時期と目的が取得に関するものかどうかを確認することをおすすめします。
| 確認項目 | 分類の考え方 |
|---|---|
| 取得時の印紙税 | 取得費に含まれる可能性がある |
| 売却時の印紙税 | 譲渡費用として整理する可能性がある |
| 登録免許税 | 登記費用として取得費に含まれる可能性がある |
| 確認資料 | 契約書、登記費用の明細、領収書 |
不動産取得税や登記費用
借地権や建物を取得したときに発生した不動産取得税や登記費用も、取得費に含まれる可能性があります。司法書士へ依頼した場合は、報酬の明細と登録免許税の内訳を分けて確認しておくとよいでしょう。
取得時の登記費用と売却時の登記費用を混同しないよう、支払い時期を確認しながら整理することをおすすめします。
過去に必要経費として処理済みの費用は、取得費に重ねて含められない場合がある点は前述の通りです。判断に迷う場合は、税理士へ確認することをおすすめします。
借地権取得のために必要だった測量費や訴訟費用
借地権を取得するために必要だった測量費や訴訟費用なども、取得費に関係する可能性があります。ただし、これらは費用名だけで判断できるものではなく、支払った目的によって取得費、譲渡費用、その他の費用に分かれる可能性がある点に注意が必要です。
たとえば、取得のために実施した測量費は取得費に関係する可能性がある一方、売却のために実施した測量費は譲渡費用として整理する場合があります。費用名が同じでも、支払い目的によって分類が変わる可能性がある点は前述の通りです。
| 区分 | 分類の考え方 |
|---|---|
| 取得のための測量費 | 取得費に関係する可能性がある |
| 売却のための測量費 | 譲渡費用として確認する可能性がある |
| 取得のための訴訟費用 | 取得費に関係する可能性がある |
| 確認資料 | 領収書、契約書、測量図、裁判関係資料 |
測量費や訴訟費用は、過去に必要経費として処理されているケースもあるため、二重に計上しないよう確認することが望ましいといえます。判断が難しい費用にあたるため、税理士への確認をおすすめします。
借地権の取得費が不明な場合の考え方
昔から所有している借地権や相続した借地権では、契約書や領収書が残っておらず、実額取得費を証明しにくいことがあります。取得費が不明な場合は、まず資料を探し、それでも分からない場合に概算取得費を検討する流れが基本になります。
概算取得費(売却代金の5%相当額)の考え方については前述の通りですが、ここでは「取得費が分からない」という状況に直面したときに、どのような順序で確認を進めればよいかを整理します。
契約書や領収書がないと実額取得費を証明しにくい
実額取得費を使うには、支払った金額を証明できる資料が必要になります。借地契約書や売買契約書、権利金や更新料の領収書、通帳、振込明細などがそろっているほど、取得費を整理しやすくなります。
反対に、これらの資料が見当たらない費用については、支払った事実を証明することが難しくなる可能性があります。相続した借地権の場合は、被相続人が保管していた資料を確認することも一つの方法です。
資料が見つからない費用を自己判断で取得費に含めることは避け、他の資料で支払いを確認できないか検討することが望ましいといえます。判断が難しい場合は、税理士へ相談することをおすすめします。
取得費が不明な場合は概算取得費を使うことがある
実額取得費を確認できない場合は、概算取得費を使う場合があります。昔に取得した借地権や相続した借地権では、取得時の資料が見つからないことが少なくありません。
ただし、概算取得費は資料を探したうえでの選択肢の一つであり、最初から使うことを前提に進めるものではない点に注意が必要です。実額取得費が確認できる場合は、概算取得費よりも譲渡所得を抑えられる可能性があります。
概算取得費は売却代金の5%で計算する
概算取得費は、売却代金の5%相当額で計算する考え方であることは前述の通りです。国税庁の案内でも、取得費が分からない場合に売却金額の5%相当額を取得費とすることができるとされています。(参考:国税庁 No.3258 取得費が分からないとき)
概算取得費は実額取得費よりも小さくなりやすく、結果として譲渡所得が大きくなる可能性があります。使う前に、実額取得費を証明できる資料が本当にないかどうかを確認しておくことが望ましいといえます。
| 区分 | 計算の考え方 | 計算例(売却代金3,000万円の場合) |
|---|---|---|
| 概算取得費 | 売却代金×5% | 3,000万円×5%=150万円 |
上記の金額はあくまで一例であり、実際の金額は売却代金によって変動します。個別の状況によって適用条件が異なる可能性があるため、最終的な計算は税理士や税務署へ確認することをおすすめします。
実額取得費の方が有利になる場合は資料を探す
概算取得費よりも実額取得費の方が大きい場合は、実額取得費を使う方が譲渡所得を抑えられる可能性があります。権利金や借地権購入代金、取得時の仲介手数料、登記費用、更新料などの資料がそろうと、概算取得費より有利になるケースもあります。
そのため、概算取得費を検討する前に、考えられる資料を一通り探しておくことが望ましいといえます。
| 区分 | 金額の目安 | 譲渡所得への影響 |
|---|---|---|
| 実額取得費 | 資料で確認できた金額(例:500万円) | 概算取得費より大きい場合、譲渡所得を抑えられる可能性がある |
| 概算取得費 | 売却代金の5%(例:150万円) | 実額より小さい場合、譲渡所得が大きくなる可能性がある |
上記の金額はあくまで理解のための一例であり、実際の取得費は個別の状況によって異なります。資料がない金額を自己判断で水増しすることは避け、見つかった資料は税理士へ確認することをおすすめします。
取得費が不明な場合は税理士や税務署へ確認する
借地権の取得費は、権利金、更新料、譲渡承諾料、名義書換料、測量費など、判断が難しい費用が多い点は前述の通りです。取得費が不明な場合や、費用の分類に迷う場合は、税理士や税務署へ確認すると整理しやすくなります。
特に、相続した借地権を売却する場合や、売却益が大きくなりそうな場合は、確定申告の準備とあわせて早めに相談しておくことをおすすめします。
税理士へ相談すれば必ず税金が安くなるとは限らず、税務署も個別の節税方法を提案する立場ではない点に留意が必要です。資料を整理したうえで、確定申告期限に余裕を持って相談することをおすすめします。
相続した借地権を売却する場合の取得費
相続した借地権を売却する場合、取得費は相続時の評価額ではなく、原則として被相続人が借地権を取得したときの取得費を引き継いで考えるものとされています。相続税評価額や現在の借地権価格をそのまま取得費にできるわけではない点に注意が必要です。
ここでは、被相続人の取得費資料の確認方法、取得費が分からない場合の対応、相続税の取得費加算、相続人や共有者がいる場合の権利関係について整理します。
相続した借地権は被相続人の取得費を引き継ぐことが多い
相続した借地権の取得費は、原則として被相続人が借地権を取得したときの購入代金や取得時の費用をもとに計算します。相続によって取得したからといって、相続時点の評価額が新たな取得費になるわけではない点に注意が必要です。
そのため、被相続人がいつ、いくらで借地権を取得したのかを示す資料を確認することが出発点になります。資料が見つからない場合は、後述する概算取得費を検討する可能性があります。
| 確認項目 | 確認内容 |
|---|---|
| 被相続人の取得時期 | 借地権をいつ取得したか |
| 被相続人の取得金額 | 権利金や購入代金などの支払額 |
| 取得時の仲介手数料 | 取得時に支払った仲介手数料の有無 |
| 登記費用 | 取得時に発生した登記関係の費用 |
| 相続時評価額との違い | 相続税評価額と取得費は別物である点の確認 |
相続税の申告書だけで取得費を判断せず、被相続人が取得した当時の契約書や領収書を確認することが望ましいといえます。判断に迷う場合は、税理士へ確認することをおすすめします。
被相続人が支払った権利金や更新料の資料を確認する
被相続人が支払った権利金や更新料の資料を確認することは、相続した借地権の実額取得費を整理するうえで重要な手がかりになります。借地契約書や更新契約書、領収書、通帳、過去の確定申告書控えなどを探すことが基本になります。
古い借地権では資料が見つかりにくいこともありますが、保管ファイルや金庫内の資料、相続税申告書に関連情報が残っている場合もあります。
資料がない金額を相続人が推定して取得費に入れることは避けたほうがよいでしょう。資料の内容について判断に迷う場合は、税理士へ相談することをおすすめします。
取得費が分からない場合は概算取得費を検討する
被相続人の取得費資料が見つからない場合は、概算取得費(売却代金の5%相当額)を検討する場合がある点は前述の通りです。相続物件は取得時期が古いことが多く、実額取得費を確認できないケースも少なくありません。
ただし、相続したからといってすぐに概算取得費でよいというわけではなく、被相続人の資料を探したうえで、実額取得費と概算取得費を比較することが望ましいといえます。
相続税の取得費加算を使える場合がある
相続した借地権を売却する場合で、相続税を支払っている場合、相続や遺贈で取得した財産を一定期間内に売却すると、相続税額のうち一定金額を取得費に加算できる場合があります。適用には、相続税が課税されていることや、相続開始日の翌日から相続税の申告期限の翌日以後3年を経過する日までに譲渡することなどの要件があります。
取得費加算が使えるかどうかは、相続税の申告状況や売却時期によって異なる可能性があるため、自己判断せず税理士へ確認することをおすすめします。
相続税が課税されていない場合は、取得費加算の対象にはなりません。制度の詳細や期限については、最新の情報を税理士へ確認することをおすすめします。
相続人や共有者がいる場合は売却前に権利関係を整理する
相続した借地権を売却する際は、取得費の整理に加えて、相続人や共有者の同意、名義、登記などの権利関係も確認しておく必要があります。権利関係が整理されていないと、売却手続きや確定申告の準備が進みにくくなる可能性があります。
遺産分割協議が未了の場合や、共有者の同意が得られていない場合は、相続人一人の判断だけで売却を進めにくい傾向があります。登記や名義変更については司法書士、相続人同士の意見が対立している場合は弁護士、税金については税理士というように、相談先を分けて考えることをおすすめします。
| 確認項目 | 確認内容 |
|---|---|
| 相続人の人数 | 相続人が何人いるか |
| 共有者の有無 | 借地権を共有している人がいるか |
| 遺産分割協議 | 協議が完了しているか |
| 売却への同意 | 相続人・共有者全員の同意があるか |
| 建物登記・名義 | 登記や名義が整理されているか |
| 相談先 | 登記は司法書士、税金は税理士など |
権利関係の整理は、取得費の確認とあわせて売却前に進めておくことが望ましい項目の一つです。
借地売却の取得費を確認するために必要な書類
借地売却で取得費を確認するには、契約書や領収書などの根拠資料をそろえることが基本になります。ここまで費用ごとに確認すべき資料を整理してきましたが、ここでは書類の種類ごとに、何を確認できるかという視点で整理します。
借地契約書や更新契約書、権利金・更新料の領収書、借地権取得時の売買契約書、仲介手数料や登記費用の領収書、譲渡承諾料や名義書換料の資料、通帳や過去の確定申告書控えなど、確定申告や税理士への相談に向けて手元にそろえておくと、譲渡所得の試算がしやすくなります。
借地契約書や更新契約書
借地売却の取得費を確認するうえで、借地契約書や更新契約書は基本となる資料です。契約書には、権利金、地代、更新料、契約期間、更新条件などが記載されている場合があり、取得費や更新料の扱いを確認する手がかりになります。
古い契約書では、現在の状況と内容が異なっている場合もあるため、領収書や通帳と照らし合わせながら確認することが望ましいといえます。
| 確認項目 | 確認内容 |
|---|---|
| 契約開始日 | 借地契約を結んだ日付 |
| 契約期間 | 契約期間と更新時期 |
| 権利金・地代 | 権利金や地代の金額の記載 |
| 更新料 | 更新料の有無や金額の記載 |
| 支払い条件 | 支払い方法や時期の記載 |
| 地主情報 | 契約当事者の確認 |
契約書に金額の記載があるだけで取得費になると断定はできず、領収書や通帳とあわせて確認することが望ましいといえます。判断に迷う場合は、税理士へ相談することをおすすめします。
権利金や更新料の領収書
権利金や更新料の領収書は、取得費や取得費に関係する費用を確認するうえで重要な資料になります。借地権売却では権利金や更新料の扱いが税務上の判断に関係する場合があるため、支払いを証明できる資料を整理しておくとよいでしょう。
領収書が見当たらない場合は、通帳や振込明細から支払い履歴をたどれないか確認します。相続した借地権の場合は、被相続人が保管していた資料も確認の対象になります。
借地権取得時の売買契約書
借地権を購入して取得した場合、取得時の売買契約書は実額取得費を確認するための重要な資料になります。売買契約書には、借地権の購入代金や建物代金、契約日、取引相手などが記載されているため、取得費を整理する手がかりになります。
建物代金と借地権代金の内訳が不明な場合に、自己判断で按分することは避けたほうがよいでしょう。内訳が分からない場合は、領収書や通帳と照合しながら確認することをおすすめします。
| 確認項目 | 確認内容 |
|---|---|
| 契約日・取得日 | 契約を結んだ日と取得日 |
| 売主・買主 | 契約当事者の確認 |
| 借地権購入代金 | 借地権部分の金額 |
| 建物代金 | 建物部分の金額 |
| 代金の内訳 | 借地権代金と建物代金の区分 |
| 支払い方法 | 一括・分割などの支払い条件 |
仲介手数料や登記費用の領収書
借地権や建物を取得したときに支払った仲介手数料や登記費用の領収書も、取得費を確認する資料の一つになります。取得時の仲介手数料や登記費用は取得費に関係する可能性がある一方、売却時に支払ったものは譲渡費用として整理する場合がある点は前述の通りです。
司法書士へ依頼した場合は、登録免許税と司法書士報酬の内訳が分かる明細を確認しておくと整理しやすくなります。
| 確認項目 | 分類の考え方 |
|---|---|
| 取得時の仲介手数料 | 取得費に含まれる可能性がある |
| 売却時の仲介手数料 | 譲渡費用として整理する可能性がある |
| 登録免許税 | 登記費用として取得費に含まれる可能性がある |
| 司法書士報酬 | 登録免許税とは別に確認する費用 |
譲渡承諾料や名義書換料の資料
借地権売却時に地主へ支払う譲渡承諾料や名義書換料の資料も、確定申告に向けて保管しておくことが望ましい資料の一つです。これらは取得費ではなく、譲渡費用として確認する場合がある点は前述の通りです。
地主承諾書や合意書、領収書、振込明細などを保管し、取得費と混同しないよう、売却に関する費用として整理しておくことをおすすめします。
通帳や過去の確定申告書の控え
契約書や領収書が見つからない場合でも、通帳や過去の確定申告書控えが、支払いを確認する手がかりになる場合があります。特に古い借地権や相続した借地権では、領収書が残っていないケースも少なくありません。
振込先や金額から支払い目的が推測できる場合もありますが、支払い目的が不明な金額をそのまま取得費とすることは避けたほうがよいでしょう。代替資料として使えるかどうかは、税理士へ確認することをおすすめします。
| 代替資料 | 確認できる可能性がある内容 |
|---|---|
| 通帳 | 権利金や更新料などの支払い履歴 |
| 振込明細 | 振込先や金額からの支払い目的の推測 |
| 確定申告書控え | 過去に申告した関連費用の記載 |
| 相続税申告書 | 相続した借地権に関する参考情報 |
| 被相続人の保管資料 | 相続した場合の取得時資料 |
借地売却で取得費を整理するときの注意点
借地売却の取得費は、費用名だけで自己判断できるものではなく、支払い目的、支払い時期、資料の有無、過去の経費処理状況によって扱いが変わる可能性があります。取得費は譲渡所得を抑える重要な項目である一方、誤った分類で申告すると、過少申告や過大申告につながる可能性もあります。
ここでは、取得費を整理するときに注意しておきたいポイントを横断的に確認します。
取得費に含められる費用を自己判断で決めない
借地売却で発生する費用が取得費に含められるかどうかは、費用名だけでは判断できない可能性があります。支払った目的や時期、契約内容、過去の処理状況によって扱いが変わる可能性がある点に注意が必要です。
権利金、更新料、測量費、訴訟費用などは、個別の確認が望ましい費用にあたります。これらの費用候補を一覧化したうえで、税理士や税務署へ確認することをおすすめします。
必要経費として処理済みの費用は取得費にできない場合がある
過去に事業所得や不動産所得などの必要経費として処理した費用は、取得費に重ねて含められない場合があります。同じ費用を二重に差し引くことは、税務上の問題につながる可能性があるため注意が必要です。
更新料や修繕費、測量費などは、過去の確定申告書や帳簿で経費処理の有無を確認することが望ましいといえます。特に事業用や賃貸用として借地権を使っていた場合は、二重計上にならないよう税理士への確認をおすすめします。
| 確認項目 | 確認内容 |
|---|---|
| 確定申告書控え | 過去に必要経費として申告していないかの確認 |
| 収支内訳書 | 事業所得・不動産所得の経費内訳 |
| 青色申告決算書 | 青色申告をしている場合の経費記録 |
| 帳簿 | 経費として計上した記録の有無 |
| 会計ソフトの記録 | 電子データで残る経費処理履歴 |
取得費と譲渡費用を混同しない
取得費と譲渡費用は、いずれも譲渡所得の計算で差し引く可能性がある費用ですが、分類は分けて整理することが望ましいといえます。仲介手数料、譲渡承諾料、名義書換料、測量費、解体費などは、借地売却で特に混同されやすい費用にあたる点は前述の通りです。
支払い時期が取得時か売却時かを基準に確認すると、分類しやすくなります。同じ費用を取得費と譲渡費用の両方に計上することは避けたほうがよいでしょう。
| 区分 | 該当する可能性がある費用の例 |
|---|---|
| 取得費 | 権利金、借地権購入代金、取得時の仲介手数料、取得時の登記費用 |
| 譲渡費用 | 売却時の仲介手数料、譲渡承諾料、名義書換料、売却のための測量費、売却のための解体費 |
領収書や契約書がない費用は証明が難しくなる
取得費として整理したい費用でも、領収書や契約書などの根拠資料がないと、証明が難しくなる可能性があります。特に古い借地権や相続した借地権では、資料が見つからないことが多いため、代替資料も含めて確認しておくことが望ましいといえます。
通帳や振込明細、過去の確定申告書控えなどが代替資料になる場合がある点は前述の通りです。資料が見つからない場合は、概算取得費の検討につながる点にも注意が必要です。
判断に迷う費用は税理士や税務署へ確認する
借地売却の取得費は、判断が難しい費用が多い点が特徴です。権利金、更新料、譲渡承諾料、名義書換料、測量費、訴訟費用、解体費などは、支払い目的や時期によって扱いが変わる可能性がある点は前述の通りです。
自己判断で申告するのではなく、資料を整理したうえで専門家へ確認する流れが望ましいといえます。確定申告期限に余裕を持って相談することをおすすめします。
借地売却の取得費を使った計算例
ここまで取得費の考え方や確認方法を整理してきましたが、実際にどの程度の譲渡所得や税額になるのかは、取得費の根拠資料の有無や所有期間によって変わります。計算式自体は前述の通りですが、ここでは具体的な数値を当てはめた計算例を確認します。
以下の数値はあくまで理解を深めるための一例であり、実際の金額は売却代金、取得費の根拠資料、所有期間、特例の適用有無などの個別条件によって異なります。最終的な税額は税理士や税務署へ確認することをおすすめします。
実額取得費が分かる場合の計算例
権利金や購入代金、取得時の仲介手数料などの資料がそろい、実額取得費を使える場合は、概算取得費よりも譲渡所得を抑えられる可能性があります。たとえば、売却代金、取得費、譲渡費用が次のような場合を考えます。
| 項目 | 金額(一例) | 内容 |
|---|---|---|
| 売却代金 | 3,000万円 | 借地権と建物の売却金額 |
| 実額取得費 | 800万円 | 権利金、購入代金、取得時の仲介手数料などの合計 |
| 譲渡費用 | 120万円 | 売却時の仲介手数料、譲渡承諾料などの合計 |
| 譲渡所得 | 2,080万円 | 3,000万円-800万円-120万円で求めた金額 |
この例では、概算取得費(売却代金の5%にあたる150万円)よりも実額取得費の方が大きいため、譲渡所得を抑えられる結果になっています。ただし、上記の金額や内訳はあくまで一例であり、実際の取得費や譲渡費用は契約内容や資料の有無によって変わります。同じ売却代金でも、取得費の内訳によって譲渡所得は変動する点に注意が必要です。
概算取得費を使う場合の計算例
実額取得費の資料が見つからない場合は、概算取得費(売却代金の5%相当額)を使う場合がある点は先に述べた通りです。同じ売却代金で、実額取得費を使う場合と概算取得費を使う場合とで譲渡所得がどう変わるかを比較します。
| 区分 | 取得費 | 譲渡費用 | 譲渡所得 |
|---|---|---|---|
| 実額取得費を使う場合 | 800万円 | 120万円 | 2,080万円 |
| 概算取得費を使う場合 | 150万円 | 120万円 | 2,730万円 |
この例のように、概算取得費を使うと、実額取得費を使う場合よりも譲渡所得が大きくなる可能性があります。そのため、資料を探さずに概算取得費を使うことは、結果として税負担が増える可能性がある点に注意が必要です。上記の金額は条件を単純化した一例であり、実際の数値は個別の状況によって異なります。
所有期間によって税額が変わる計算例
譲渡所得が同じ金額でも、所有期間が長期譲渡所得に該当するか短期譲渡所得に該当するかによって、税額が変わる可能性があります。所有期間の判定の考え方は前述の通りですが、ここでは譲渡所得が同額の場合の税額イメージを比較します。
| 区分 | 譲渡所得 | 確認しておきたい点 |
|---|---|---|
| 短期譲渡所得の場合 | 2,080万円 | 長期譲渡所得に該当する場合より税率が高くなる可能性がある |
| 長期譲渡所得の場合 | 2,080万円 | 短期譲渡所得に該当する場合より税率が低くなる可能性がある |
同じ譲渡所得でも、所有期間によって最終的な税額が変わる可能性があるため、取得費だけでなく所有期間の確認もあわせて行うことが望ましいといえます。具体的な税率や計算方法は税制改正によって変わる可能性があるため、最新の情報は税理士や税務署へ確認することをおすすめします。
相続した借地権を売却する場合の計算例
相続した借地権を売却する場合は、被相続人の取得費を引き継いで計算する場合がある点は前述の通りです。被相続人が借地権を取得した当時の資料が見つかった場合と見つからなかった場合とで、譲渡所得がどう変わるかを比較します。
| 区分 | 取得費の根拠 | 取得費 | 譲渡所得(売却代金3,000万円の場合) |
|---|---|---|---|
| 被相続人の資料がある場合 | 被相続人が取得時に支払った権利金などの資料 | 600万円 | 2,280万円 |
| 被相続人の資料がない場合 | 概算取得費(売却代金の5%) | 150万円 | 2,730万円 |
このように、被相続人の資料が見つかるかどうかで、譲渡所得の金額に差が生じる可能性があります。相続した借地権を売却する際は、相続税の取得費加算が使えるかどうかとあわせて、被相続人の資料を探すことが結果的に税負担を抑えることにつながる場合がある点に注意が必要です。上記の金額はいずれも理解のための一例であり、実際の取得費加算の適用条件や金額は個別の状況によって異なります。
借地売却の取得費に関するよくある質問
ここまで、借地売却における取得費の考え方や確認方法、計算例などを整理してきました。最後に、借地売却の取得費について読者が抱きやすい疑問をQ&A形式で確認します。
本文で説明した内容と重なる部分もありますが、ここでは結論を先に示したうえで簡潔に補足します。詳しい内容は、それぞれの本文見出しへのリンクから確認できます。
借地権を売却する費用はいくらですか?
借地権の売却では、仲介手数料や印紙税のほか、地主へ支払う譲渡承諾料や名義書換料、測量費、登記費用などが発生する場合があります。これらの金額は、借地権の条件や契約内容、地主との関係性によって異なる可能性があります。
売却益が出た場合は、譲渡所得税がかかる可能性もあります。取得費と譲渡費用を分けて整理しておくと、最終的な手残り額を把握しやすくなります。費用の内訳については、必要書類の見出しもあわせて確認することをおすすめします。
借地権の取得費とは何ですか?
借地権の取得費とは、借地権や建物を取得するためにかかった費用のことです。権利金、借地権の購入代金、取得時の仲介手数料、登記費用などが取得費に含まれる可能性がある点は先に述べた通りです。
売却時にかかった費用とは分けて整理する必要があり、譲渡所得を計算するときに売却代金から差し引く項目にあたります。詳しくは借地売却の取得費とはの見出しで確認できます。
借地権の売却は非課税ですか?
借地権の売却は、必ずしも非課税とは限りません。売却益(譲渡所得)が出た場合は、譲渡所得税や住民税がかかる可能性があります。
譲渡所得は、売却代金から取得費と譲渡費用を差し引いて計算される仕組みです。取得費が大きいほど譲渡所得を抑えられる可能性がある一方、取得費が不明な場合は概算取得費を使うことで譲渡所得が大きくなる場合があります。所有期間や特例の有無によっても税額は変わる可能性があるため、正確な判断は税理士や税務署へ確認することをおすすめします。
借地権の更新料は取得費に含まれますか?
更新料は、取得費に関係する場合がありますが、必ず含まれるとは限りません。契約内容や支払い目的、過去の経費処理の有無によって扱いが変わる可能性があります。
更新契約書や領収書を確認し、単なる期間更新によるものか、契約内容の変更を伴うものかなどを整理しておくとよいでしょう。判断に迷う場合は、税理士や税務署へ確認することをおすすめします。
借地権の譲渡承諾料は取得費ですか?
譲渡承諾料は、取得費ではなく譲渡費用として確認する場合があります。借地権を売却するために地主へ支払う費用であるため、取得時にかかった費用とは性質が異なる点に注意が必要です。
名義書換料についても同様に、譲渡費用として整理する場合があります。地主承諾書や領収書を保管し、取得費と混同しないよう確認することをおすすめします。
借地権の取得費が分からない場合はどうすればよいですか?
まずは契約書や領収書、通帳、過去の確定申告書控えなどの資料を探すことが基本になります。相続した借地権の場合は、被相続人が保管していた資料も確認の対象です。
資料を探しても実額取得費が分からない場合は、概算取得費(売却代金の5%相当額)を検討することがあります。最終的な判断は、税理士や税務署へ確認することをおすすめします。
相続した借地権の取得費はどう計算しますか?
相続した借地権の取得費は、相続時の評価額ではなく、被相続人が取得したときの取得費を引き継いで考えることが多いとされています。被相続人の契約書や領収書を探し、見つからない場合は概算取得費を検討することがあります。
相続税を支払っている場合は、一定の条件のもとで取得費加算の特例を使える場合もあります。詳しくは相続税の取得費加算の見出しで確認できます。
借地権を売却したら確定申告は必要ですか?
売却益(譲渡所得)が出た場合は、確定申告が必要になる可能性があります。譲渡所得がない場合や損失が出た場合でも、特例の適用によっては申告が必要になる場合があります。
売買契約書や取得費・譲渡費用に関する領収書を保管しておき、所有期間や売却代金とあわせて確認しておくことが望ましいといえます。確定申告の要否について判断に迷う場合は、税理士や税務署へ早めに確認することをおすすめします。
借地売却の取得費は資料を整理して譲渡所得を正しく計算する
借地権や借地上の建物を売却したときの取得費は、譲渡所得の計算に直接影響する重要な項目です。取得費は借地権や建物を取得するためにかかった費用であり、権利金、購入代金、取得時の仲介手数料、登記費用、更新料などが関係することがあります。
一方で、売却時に発生する譲渡承諾料や名義書換料、売却時の仲介手数料などは、取得費ではなく譲渡費用として整理する場合があります。取得費と譲渡費用を混同せず、それぞれ根拠資料をもとに整理することが、譲渡所得を正しく試算するための出発点になります。
取得費:借地権や建物を取得するためにかかった費用です。権利金、借地権購入代金、取得時の仲介手数料、登記費用などが該当する可能性があります。
譲渡費用:借地権や建物を売却するために直接かかった費用です。売却時の仲介手数料、譲渡承諾料、名義書換料などが該当する可能性があります。
概算取得費:取得費が不明な場合に、売却代金の5%相当額を取得費として計算する場合がある考え方です。実額取得費を証明できる資料がある場合は、実額取得費の方が有利になる可能性があります。
取得費が不明な場合は、概算取得費を検討する場合がある点も前述の通りですが、概算取得費を使う前に、契約書、領収書、通帳、過去の確定申告書控えなどの資料を探しておくことが望ましいといえます。特に、昔から所有している借地権や相続した借地権では、被相続人が保管していた資料の確認も重要な手順の一つです。
売却代金 − 取得費 − 譲渡費用 = 譲渡所得
借地権や借地上の建物を売却したときは、まずこの式をもとに譲渡所得を整理します。ただし、実際の課税額を確認する際は、所有期間、税率、特例や特別控除の適用有無もあわせて確認する必要があります。
更新料、譲渡承諾料、名義書換料など、契約内容や支払い目的によって扱いが変わる可能性がある費用については、自己判断で取得費や譲渡費用に含めるのではなく、税理士や税務署へ確認しながら整理を進めることをおすすめします。
借地売却の取得費は、資料を整理し、取得費・譲渡費用・概算取得費を分けて把握したうえで、譲渡所得を試算することが基本になります。相続した借地権や昔から所有している借地権で取得費資料が見つからない場合でも、まずは探せる資料を一通り確認し、それでも判断が難しい項目については税理士や税務署へ相談することをおすすめします。