相続不動産で兄弟が揉めた場合は感情論で進めず、評価額・名義・利用状況・分割方法を整理しましょう。

不動産は均等に分けにくく、売却・居住・代償金・共有名義に加え、固定資産税や住宅ローン、生前贈与、介護負担が絡むと兄弟間で対立しやすいです。

兄弟間の不公平感を減らすには、評価額、登記名義、利用状況、維持費、ローン残高を全員で共有し、現物分割・代償分割・換価分割・共有のどれが合うかを比べる必要があります。

共有名義のまま放置すると将来の売却や管理で再び揉めやすいため、話し合いが進まない場合は専門家や遺産分割調停を検討しましょう。

法務省・法務局の資料では、相続開始から10年を経過した後の遺産分割は原則として法定相続分または指定相続分によると案内されています。(参考:法務局「不動産に関するルールが変わりました」

相続不動産で兄弟が揉めたときは、評価額と分割方法を見える化が解決の第一歩です。

本記事では、兄弟間で揉めやすい原因、分割方法、売却を含めた対処法を順番に解説します。

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相続した不動産を売却するかお悩みの方は、以下の記事も参考にしてください。
▶︎「相続した家を売らないとどうなる?6つのリスクと売却・保有の判断基準

Contents
  1. 相続不動産で兄弟が揉めた際にまずやるべきこと
  2. 相続不動産で兄弟が揉める原因
  3. 相続不動産を兄弟で分割する方法
  4. 相続不動産で兄弟が揉めた際の解決方法
  5. 相続不動産で兄弟が揉めないための対策
  6. 兄弟で不動産相続する場合の注意点
  7. 相続不動産で兄弟が揉める際によくあるQ&A
  8. 相続不動産で兄弟が揉めそうな場合は早めに専門家へ相談しよう

相続不動産で兄弟が揉めた際にまずやるべきこと

相続不動産 兄弟 揉める

相続不動産で兄弟が揉めた場合は、話し合う前に相続人・名義・評価額・費用負担を整理しましょう。

売却・居住・分割額・費用負担の話が混ざると協議が進みにくいため、まずは兄弟全員で同じ資料と数字を共有します。

整理する項目 確認する理由 確認書類 相談先
相続人 誰が話し合いに参加すべきか確認するため 戸籍謄本・法定相続情報一覧図 司法書士・弁護士
不動産の名義 誰の名義になっているか確認するため 登記事項証明書 司法書士
不動産の評価額 分割方法や代償金の基準にするため 固定資産評価証明書・査定書 不動産会社
居住者・利用者 誰が住んでいるかで主張が変わるため 現地状況・家族間メモ 弁護士
固定資産税・管理費 負担割合をめぐる揉め事を防ぐため 納税通知書・領収書 税理士・弁護士
売却可否 現金化して分けられるか確認するため 査定書・登記事項証明書 不動産会社

法務省は、相続登記を不動産取得を知った日から3年以内に申請する必要があると案内しています。(参考:法務省「相続登記の申請義務化に関するQ&A」

名義や相続人の確認が遅れると登記手続きに影響するため、戸籍謄本や登記事項証明書は早めに集めましょう。

感情論での話し合いを一度止める

相続不動産では売却・居住・代償金・共有名義・費用負担が混ざりやすいため、まずは対立点を切り分けましょう。

感情を交えた話し合いは対立が固定化し、解決までの期間の長期化や関係性の悪化のリスクがあります。

一度物理的に距離を置き、論理的に落ち着いて円満な資産分割ができるよう事実の整理を行いましょう。

協議が停滞しているサイン
  • 過去の不満や感情的な発言が繰り返されている
  • 売る・売らない・価格・利用方法など論点が混在している
  • 話し合いのたびに結論が振り出しに戻る

協議が停滞した場合は、裁判官と調停委員が争点を整理する家庭裁判所の遺産分割調停を検討します。(参考:裁判所「遺産分割調停」)

相続不動産の話し合いが感情論に傾いた時点で、無理に続けず第三者を介した制度を活用してください。

相続不動産の事実関係を整理する

相続不動産で揉めたときは、相続人と遺産に含まれる不動産を先に確認しましょう。

相続人や遺産の範囲があいまいなままでは協議が進まないため、登記名義・固定資産税・管理費・居住状況を資料で確認します。

分類 必要書類 目的
相続人の確定 ・被相続人の出生〜死亡までの戸籍謄本
・相続人全員の戸籍謄本
相続人を法的に明確にする
不動産の内容把握 ・不動産登記事項証明書
・固定資産評価証明書
所在地・地番・名義・評価額を正確に把握する

裁判所の遺産分割調停の書式には、申立書のほか、土地遺産目録、建物遺産目録、当事者目録などがあります。(参考:裁判所「遺産分割調停の申立書」

調停に進む場合は、相続人・不動産・評価額・費用負担を一覧化し、必要に応じて司法書士や弁護士へ相談しましょう。

相続不動産の評価額を共通認識にする

相続不動産の分け方で揉めている場合は、固定資産税評価額・路線価・実勢価格の違いを把握し、兄弟間で金額の前提をそろえましょう。

固定資産税評価額や路線価は税金計算に使う評価であり、実際の売却価格とは異なります。

国税庁は土地評価方法、国土交通省は取引価格や地価公示などの価格情報を案内しています。(参考:国税庁「No.4602 土地家屋の評価」参考:国土交通省「不動産情報ライブラリ」

代償金や換価分割を話し合う場合は、税務上の評価だけでなく複数社の査定額と根拠を比べ、実勢価格の目安をそろえましょう。

メリット 理由 判断に使えること
評価額の共通認識ができる 兄弟間で金額の前提をそろえられる 売却・代償金の判断
換価分割を検討しやすい 売却見込み額が分かる 現金で分けるか判断
代償金を決めやすい 取得者が支払う金額の基準になる 代償分割の可否
共有解消を検討しやすい 売却した場合の手取りを把握できる 共有継続か売却か判断
不動産会社の対応を比較できる 相続案件への理解度に差がある 依頼先選び

査定額は売却保証額ではありませんが、売却、代償分割、共有継続を話し合う基準になります。

呼称 決定主体 目的・役割 価格の目安
実勢価格 市場(売買当事者) 実際の売買成立価格 時価(100%)
公示価格 国土交通省 一般的な土地取引の指標 100%
基準地価 都道府県 公示価格を補完する指標 100%
相続税路線価 国税庁 相続税・贈与税の算定 約80%
固定資産税評価額 市町村 固定資産税の算定 約70%

相続税路線価は時価の約80%、固定資産税評価額は約70%と、基準ごとに最大3割の差があります。

調停や審判で評価額が争点になる場合に備え、査定書や鑑定書、話し合いの内容を書面で残しておきましょう。

兄弟だけで解決しようとしない

兄弟だけで相続不動産の話し合いが進まない場合は、専門家や家庭裁判所の調停を検討しましょう。

相続不動産では登記・評価額・代償金に加え、生前贈与にあたる特別受益や介護貢献を反映する寄与分が争点になりやすいです。

兄弟ごとに主張が違う場合は、相談先を分けると次の対応を決めやすくなります。

区分 内容 整理・記載のポイント
申立書の作成 争点や希望条件を明記 取得したい財産と対立点を簡潔に整理する
遺産目録の整理 不動産・預金・株式などの資産一覧 種類・内容・評価額を一覧化し漏れや認識違いを防ぐ
争点の把握・メモ化 代償金の金額 支払う相手・金額・算定根拠を明確にする
寄与分の主張 介護・看護・事業貢献を期間や事実ベースで整理する
特別受益の有無 生前贈与や学費援助など公平性に影響する支援を確認する

家庭裁判所の遺産分割調停では、申立書や遺産目録、当事者目録などの書類を使い、争点を整理しながら手続きを進めます。(参考:裁判所「遺産分割調停の申立書」

兄弟だけで話し合いを続けても進まない場合は、相続人、名義、評価額、費用負担、売却可否を整理し、相談すべき相手を選びましょう。

相続不動産で兄弟が揉める原因

相続不動産 兄弟 揉める

相続不動産で兄弟が揉める原因は、不動産が物理的に分けにくいためです。

不動産は1円単位で分けられず、売却、居住、代償金、共有名義のどれを選ぶかで兄弟の意見が分かれます。

揉める原因 起こりやすい対立 整理すべきこと 解決の方向性
不動産を均等に分けられない 誰が取得するか揉める 売却するか、代償金を払うか 換価分割・代償分割
1人だけが住んでいる 住み続けたい人と売りたい人が対立する 退去時期・使用料・売却時期 代償分割・売却
評価額が合わない 代償金の金額で揉める 実勢価格・査定額・鑑定額 複数査定・鑑定
介護負担がある 取り分を増やしたい主張が出る 介護記録・支出証拠 寄与分の整理
生前贈与がある 過去の援助に不公平感が出る 贈与額・時期・証拠 特別受益の整理
配偶者が口を出す 話し合いが複雑化する 相続人の範囲 相続人同士で協議

実家への思い入れ、介護、生前贈与への不満も絡むため、原因ごとに争点を切り分けましょう。

①不動産は現金のように均等に分けられない

相続不動産で兄弟が揉めるのは、不動産は現金のように均等に分けられないからです。

土地を半分に割っても接道状況により、坪単価は異なるため均等にはなりにくいでしょう。

民法256条では各共有者が共有物の分割を請求できると定められているため、共有名義のまま残す場合は将来の売却や管理で再び合意が必要になります。(参考:e-Gov法令検索「民法第256条」

1人が不動産を取得して代償金を払う方法もありますが、資金を用意できない場合は対立が残りやすくなるでしょう。

資産の種類 分割のしやすさ 主な対応方法 注意点
現金・預金 ◎(1円単位で可能) 法定割合で均等に分ける トラブルになりにくい
不動産(土地・家) △(物理的に難しい) ・1人が取得+代償金で調整
・共有名義にする
・代償金がないと不公平
・共有名義は売却・改築で合意必要

相続不動産を残して分ける場合は代償分割と共有名義の違いを比べ、将来の売却や改築で全員の同意が必要になる点も確認します。

不動産を売却して現金で分けたい方は、「換価分割」も検討してください。

②遺産の大半が不動産に偏っている

遺産の大半が不動産に偏っていると、兄弟での対立の原因になります。

自宅だけが主な遺産の場合、家を残したい相続人と現金で分けたい相続人の希望がぶつかりやすくなるためです。

法務省は不動産を相続で取得したことを知った日から3年以内に申請する必要があると案内しています。(参考:法務省「相続登記の申請義務化に関するQ&A」

誰が不動産を取得するか決まらないと登記や売却手続きも進みにくいため、家を残すか現金で分けるかを早めに話し合いましょう。

立場 主な考え・主張 背景・起こりやすい問題
自宅を継ぎたい相続人 ・実家を守りたい
・親の介護をしていた
思い入れが強く譲歩しにくい
現金での取り分を希望する相続人 ・自宅に住む予定はない
・公平に現金で分けてほしい
不動産取得に魅力を感じず、不公平感を抱きやすい
共通の問題点 ・自宅以外に換金できる資産が少ない
・代償金を支払える資金力が不足している
・不公平感や感情的な対立が生じやすい

遺産が不動産中心の場合は、代償金で調整できるか、売却して現金化するかを早めに比べましょう。

話し合いだけで進まないなら、家庭裁判所での調停弁護士を通じての訴訟も検討してください。

③想定よりも現預金が少ない

想定より現預金が少ないと、相続税や諸費用の支払いをめぐって兄弟間で揉めやすくなるでしょう。

不動産は売却代金をすぐ受け取れるとは限らず、国税庁は相続開始を知った日の翌日から10か月以内に相続税の申告と納税を行うよう案内しています。(参考:国税庁「No.4205 相続税の申告と納税」

納税や精算に使う現金が足りない場合は、立替者や売却の必要性を早めに決めましょう。

現金不足が問題化するケース
  • 相続税の納付資金が足りない
  • 葬儀費用や諸経費の立替で揉める
  • 納税や精算のために不動産売却が必要になる

葬儀費用、入院費、固定資産税の立替額を記録し、現預金が不足する場合は査定額や納税額とあわせて売却の要否を検討しましょう。

④不動産の評価額や代償金で認識が食い違う

不動産の評価額や代償金の認識が食い違うと、兄弟間で揉める原因になります。

評価方法で不動産価格は変わるため、国税庁の土地家屋評価を参考にしつつ、代償金や売却可否を話す前に基準価格をそろえましょう。(参考:国税庁「No.4602 土地家屋の評価」

詳しくは相続不動産の評価額を共通認識にするをご覧ください。

呼称 決定主体 目的・役割 価格の目安
実勢価格 市場(売買当事者) 実際の売買成立価格 時価(100%)
公示価格 国土交通省 一般的な土地取引の指標 100%
基準地価 都道府県 公示価格を補完する指標 100%
相続税路線価 国税庁 相続税・贈与税の算定 約80%
固定資産税評価額 市町村 固定資産税の算定 約70%

代償金や売却可否を話し合う場合は、固定資産税評価額だけでなく実勢価格も確認しましょう。

ただし代償分割時に高額な代償金を支払う現預金がない場合は、低い評価額を主張し兄弟間で揉める可能性もあります。

兄弟間で採用する評価基準を決め、査定書や話し合いの記録を残しておきましょう。

⑤相続不動産に一人だけが住んでいる

相続不動産に一人だけが住んでいる場合は、使用利益、家賃相当額、退去時期、固定資産税負担が争点になります。

民法では相続財産は共有に属し、各共有者は共有物の分割を請求できると定められているため、住み続けたい相続人がいても売却や代償金の話し合いが必要です。(参考:e-Gov法令検索「民法第898条」e-Gov法令検索「民法第256条」

立場 主な主張・考え 起きやすい問題
同居していた相続人
(例:長男)
・親の介護もしたし、住んでいる家を相続したい
・出ていく気はなく、売却もしたくない
・現金化(売却)が進まず資産分配が止まる
・居住者が代償金を払えず協議が難航
・調停・審判に発展する場合もある
他の相続人
(例:次男・長女)
・住んでいないのに分け前がもらえないのは不公平
・売却して現金で分ける「換価分割」を希望

居住中の相続人が不動産を取得するなら、代償金、家賃相当額、固定資産税負担、退去の有無を先に決めましょう。

代償金の詳細は「代償分割:取得者が他の相続人に代償金を払う」も参考にしてください。

⑥介護などによる寄与分への主張が割れる

介護をした兄弟がいる場合は、寄与分として認められるかを証拠ベースで整理しましょう。

寄与分は民法904条の2で療養看護などによる特別の寄与を考慮すると定められており、親孝行や通常の扶養を超える貢献かを資料で示す必要があります。(参考:e-Gov法令検索「民法第904条の2」

介護や生活支援は金額に換算しにくいため、記録や領収書をもとに兄弟間の認識をそろえましょう。

主張されやすい内容 他の相続人とのズレが起きやすい理由
「親の介護を10年した」 ・どこまでが“介護”なのか線引きが難しい
・金銭的負担が伴わないと寄与分として認められにくい
「同居して生活費を支えてきた」 ・生活の一部か援助か判断しにくい
・家族内の“当たり前”と見なされやすい
「相続分を多くしてほしい」 ・他の相続人から“見返り目的”に映る場合がある
・金額の妥当性や証明資料がないと不信感につながる

寄与分を主張する場合は介護記録や領収書を残し、協議がまとまらないときは家庭裁判所の調停や弁護士への相談を検討してください。参考:裁判所「寄与分を定める処分調停」

⑦生前贈与や援助による特別受益の不満

生前贈与や住宅資金、学費の援助は、特別受益に該当するかで兄弟間の不満につながりやすいです。

特別受益は、生前贈与などを相続分に反映する制度であり、民法903条では遺贈や生計の資本として受けた贈与を相続財産に加えて算定すると定められています。(参考:e-Gov法令検索「民法第903条」

立場 主張・考え方 起きやすいズレ
援助を受けた相続人 ・「昔のことだから関係ない」
・「親の意思で、返済の義務はない」
援助を軽く捉えがちで、特別受益として扱う意識が薄い
他の相続人 ・「不公平だ。自分は何も
援助されていない」
・「遺産分割で差し引くべき」
生前からの不満が再燃し、感情的な対立に発展しやすい

特別受益を主張する場合は、過去の援助を公平に数値化しにくいため、贈与契約書や振込記録を準備し、必要に応じて弁護士へ相談しましょう。

⑧兄弟以外の配偶者や子どもが口を出してくる

兄弟以外の配偶者や子どもが協議に介入すると、相続人本人の意思が見えにくくなります。

遺産分割協議は、法律上「相続人全員」で行うものであり、配偶者や子どもには法的権限(議決権)がないためです。(参考:民法第907条

登場人物 主張・発言の例 起きやすい問題
兄弟の配偶者 ・「うちの夫にはもっともらえるはず」
・「他の兄弟は何もしてこなかったのに」
感情的な発言が増えやすく、冷静な話し合いを妨げる
相続人の子ども ・「親が不当に扱われている」
・「祖父母の世話をしたのはうちだけ」
過去の出来事を感情で持ち出し、議論が感情論に偏る
他の兄弟 「相続人でもないのに口を出すな」 不信感が強まり兄弟関係そのものが悪化

協議では、法定相続人本人の意見と、配偶者や子どもの意見を分けて扱いましょう。

第三者の発言で話し合いが乱れる場合は、相続人だけで協議する場を設け、必要に応じて弁護士を介してください。

⑨遺言書が作成されず法定相続になっている

遺言書がない場合は、法定相続分をもとに兄弟間で具体的な分け方を決めましょう。

民法887条から901条では法定相続人の範囲や法定相続分が定められていますが、不動産の取得者や売却可否、代償金の支払いは別途話し合うことになります。(参考:e-Gov法令検索「民法第887条〜第901条」

法定相続の順位
  • 常に相続人: 配偶者
  • 第1順位: 子ども(子どもが死亡している場合は孫:代襲相続)
  • 第2順位: 直系尊属(父母、父母が死亡している場合は祖父母)
  • 第3順位: 兄弟姉妹(兄弟姉妹が死亡している場合は甥・姪)
    ※注意点: 先順位の人が一人でもいれば、後順位の人は相続人になれません。

先順位の相続人がいる限り、後順位は相続権を持ちません。

相続人の組み合わせ 配偶者の取り分 その他の相続人の取り分
配偶者と子ども 1/2 1/2(子ども全員で等分)
配偶者と父母 2/3 1/3(父母で等分)
配偶者と兄弟姉妹 3/4 1/4(兄弟姉妹で等分)

取り分は配偶者と子どもなら1/2ずつ、配偶者と兄弟姉妹なら3/4と1/4に定められています。
ただし不動産は法定相続分どおりに分けにくく、具体的な分割方法は別に決める必要があるでしょう。

  • 住んでいる人がそのまま相続するのか
  • 他の相続人に代償金を払うのか
  • 売却して現金で分けるのか

遺言書がない場合は、法定相続分だけで進めず、不動産の取得者、代償金、売却可否を整理しましょう。

相続不動産を兄弟で分割する方法

相続不動産 兄弟 揉める

相続不動産を兄弟で分けるには、換価分割・代償分割・現物分割・共有分割・相続放棄の5つの方法があります。

分割方法 公平性 現金負担 将来のトラブルリスク
換価分割 なし ◎(少ない)
代償分割 あり
現物分割 なし
共有分割 なし ×(高リスク)
相続放棄 なし

どの方法を選ぶかは「誰が住むのか」「代償金を用意できるか」の2点が判断基準です。

分割方法 向いているケース メリット デメリット 注意点
換価分割 公平に現金で分けたい 分けやすい・揉めにくい 実家を手放す必要がある 売却価格の合意が必要
代償分割 誰かが住み続けたい 不動産を残せる 代償金の準備が必要 評価額で揉めやすい
現物分割 土地が広く分筆しやすい それぞれが所有できる 土地条件で不公平が出る 分筆後の価値差に注意
共有分割 すぐに結論を出せない 一時的に現状維持できる 将来の売却や相続で揉めやすい 安易に選ばない
相続放棄 負債や管理負担を避けたい 相続関係から離れられる 他の財産も放棄する 期限と手続きに注意

将来の管理負担から共有分割は避け、換価分割や代償分割での解決が一般的でしょう。

分割方法を誤ると後々のトラブルにつながるおそれがあるため、注意してください。

換価分割:不動産を売却して現金で分ける

換価分割は不動産の売却代金から諸費用を差し引き、残った現金を兄弟で分ける方法です。

公平性が高く、1円単位で分割できるためトラブルの少ない遺産分割方法といえます。

国税庁は路線価方式や倍率方式、国土交通省は取引価格や地価公示を案内しているため、売却時は実勢価格もあわせて見ておきましょう。(参考:国税庁「No.4602 土地家屋の評価」国土交通省「不動産情報ライブラリ」

1社だけの査定では金額に偏りが出る場合もあるので、複数社の査定額と根拠を比べ、兄弟間で話し合う基準を作りましょう。

メリット デメリット
  • 現金で分けられるため分配の公平性が高い
  • 1円単位で分けられるため不満が出にくい
  • 共有名義や代償金問題を回避できる
  • 住み慣れた実家を手放す必要がある
  • 売却時に譲渡所得税が発生する場合がある
  • 売却までに時間がかかる場合がある

換価分割は相続不動産に住む予定がなく、長期的なリスクを抱えたくない人に向いています。

国税庁は土地や建物の譲渡所得について、売却金額から取得費と譲渡費用を差し引いて計算すると案内しています。(参考:国税庁「No.3202 譲渡所得の計算のしかた(分離課税)」

査定額と手残り額をもとに、売却・代償分割・共有継続の方針や売却時期、分け方を兄弟全員で決めましょう。

換価分割が向いている人
  • 相続不動産に住む予定がない
  • 兄弟間の公平性を最優先したい
  • 共有名義のリスクを避けたい
  • 将来の管理トラブルを残したくない

代償分割:取得者が他の相続人に代償金を払う

代償分割は不動産を1人が相続し、他の兄弟へ現金(代償金)を支払う方法です。

不動産を共有せず単独取得できるため、家業継続や介護事情にも配慮した分割ができます。

メリット デメリット
  • 不動産を共有せず単独所有にできる
  • 住み慣れた家や事業用資産を手放さずに済む
  • 感情面でも納得を得やすい
  • 代償金を一括で用意できないと実現が難しい
  • 金融機関から借入が必要になる場合がある
  • 不動産評価額について合意が必要

代償分割は「相続不動産に住み続けたい」「維持したい」と考え、代償金を払える資金力がある方に向いています。

代償分割が向いている人
  • 実家に住み続けたい
  • 家業を継続したい
  • 他の兄弟へ代償金を支払える資金がある
  • 単独所有にしたい

現物分割:土地を物理的に分ける

現物分割は土地を分筆して、兄弟がそれぞれ物理的に所有する方法です。

不動産を売却せず各人が単独所有者になれるため、自分の土地を所有したい場合に向いています。

メリット デメリット
  • それぞれが単独名義の所有権を持てる
  • 売却せずに実家や土地を保持できる
  • 利用目的に応じて柔軟に対応できる
  • 土地の形状や接道条件によって公平に分けにくい
  • 分筆や登記の手続きが必要
  • 建物がある場合は分割調整が複雑になりやすい

現物分割は単独名義で土地を保持できる一方、形状や接道条件で公平な分割が難しいケースもあります。

「土地を残したい」「自分で使いたい」と考え、兄弟で意見が一致した場合に適した方法です。

現物分割が向いている場合
  • 土地が広く、分筆しても十分な面積が確保できる
  • 各区画に接道義務(建築基準法上の要件)を満たせる
  • 互いの評価額の差が大きくならない
  • 将来それぞれが単独で利用する予定がある

共有分割:名義を複数人にする

共有分割は兄弟全員で不動産を共有名義にする、相続方法です。

共有分割では売却や賃貸、改築、抵当権設定などすべての物事に、共有者全員の合意が必要になります(参考:民法第250条)。

メリット デメリット
  • 一時的に不動産を手放す必要がない
  • 分割が困難な場合の「つなぎ」として使える
  • 相続人全員が権利を持つ形がとれる
  • 売却・賃貸・リフォームに共有者全員の同意が必要
  • 1人でも反対すると手続きが進まない
  • 次世代に相続が発生すると権利関係が複雑化しやすい
  • 人数が増えるほど管理が困難で争いの火種になる

相続手続きは比較的簡単ですが、長期保有にはリスクが高い分割方法です。

時間の経過とともに権利者や手続きが増えるため、共有分割は避けるのが得策でしょう。

共有分割を避けるべき人
  • 兄弟関係がすでに不安定
  • 将来売却の可能性がある
  • 維持費の負担割合で揉めそう
  • 次世代に相続が発生しそう

相続放棄:相続自体を辞退する

遺産全体の相続権を放棄する手続きが、相続放棄です。

相続放棄を行うと法律上、最初から相続人ではなかったものとして扱われます。(参考:民法939条

遺産分割協議での放棄とは異なり、法律上の地位を消滅させる手続きである点に注意してください。

項目 内容
手続き方法 家庭裁判所に相続放棄の申述を行う(原則3か月以内)
放棄の範囲 遺産全体が対象。不動産だけ・預金だけといった一部放棄は不可
放棄の効果 ・プラスの財産もマイナスの財産(借金など)も一切相続しない
・法定相続人から外れた扱いとなる(次順位の相続人に権利が移る)

相続放棄は、相続不動産を特定の兄弟にスムーズに集中させたい時に有効です。

「不動産だけ」「預金だけ」といった一部放棄は認められず、原則3か月以内に手続きを行いましょう。

一部引き継ぎたい場合は「限定承認」も検討を

「借金があるかもしれないが、プラスの財産があるなら引き継ぎたい」場合は、「限定承認」を検討します。(参考:民法第922条

限定承認は「相続したプラスの財産の範囲内でのみ、借金を支払う」という条件付きの相続方法です。

手続き 内容 メリット・デメリット
単純承認 相続財産をすべて無条件で引き継ぐ 手続きは不要だが、借金などの債務もすべて引き継ぐ
相続放棄 相続財産をすべて放棄する 借金から解放される一方、プラスの資産も一切取得できない
限定承認 プラスの財産の範囲内で
債務を弁済する
資産を守れる可能性があるが、相続人全員の合意が必要で手続きが非常に複雑

ただし限定承認は相続が始まったことを知った日から3か月以内に、相続人全員一致の許可を得た上での申し立てが必要です。

「実家などの不動産を守りたい」「借金の有無がはっきりしないが、資産を捨てたくない」という場合に向いています。

期限と全員一致の許可が必要なため、利用する場合は早急に親族と話し合って専門家へ相談してください。

相続不動産で兄弟が揉めた際の解決方法

相続不動産 兄弟 揉める

相続不動産で兄弟が揉めた場合は、売却・代償分割・共有解消・調停・訴訟の中から選びます。

公平に分けたい場合は売却、誰かが住み続けたい場合は代償分割を検討し、話し合いがまとまらないときは調停や弁護士相談も選択肢に入れましょう。

解決方法 向いているケース メリット 注意点 相談先
売却して清算 公平に分けたい 現金で分けやすい 売却価格の合意が必要 不動産会社・弁護士
代償分割 誰かが住み続けたい 家を残せる 代償金の準備が必要 弁護士・税理士
共有解消 すでに共有名義で揉めている 将来のトラブルを減らせる 交渉や手続きが必要 弁護士・司法書士
遺産分割調停 話し合いがまとまらない 第三者を介して協議できる 時間がかかる 家庭裁判所・弁護士
訴訟・審判 対立が強い 法的判断を得られる 費用と時間がかかる 弁護士

審判や訴訟は時間や費用がかかりやすいため、まずは売却価格・代償金・共有解消の可否を整理し、協議で解決できる範囲を見極めます。

比較項目 当事者協議 調停 審判・訴訟
主体 相続人のみ 家庭裁判所 裁判所
第三者の介入 なし あり(調停委員) あり(裁判官)
強制力 なし 合意時のみ あり
費用
期間 短〜長 数か月〜1年 1年以上
関係悪化リスク 非常に高い
向いている状況 まだ話せる 話し合いが平行線 完全に決裂

裁判所は、遺産分割の話し合いがつかない場合、家庭裁判所の調停または審判を利用できると案内しています。(参考:裁判所「遺産分割調停」

当事者だけで話せるなら協議、話し合いが平行線なら調停、対立が強い場合は弁護士への相談を考えましょう。

①相続不動産を売却して金銭で清算する

相続不動産を公平に分けたい場合は評価額の認識違いを防ぐため、売却して現金で清算します。

国税庁は相続税評価、国土交通省は取引価格や地価公示などを案内しているため、換価分割を検討する場合は税務上の評価だけでなく売却価格に近い目安も見ておきましょう。(参考:国税庁「No.4602 土地家屋の評価」国土交通省「不動産情報ライブラリ」

1社だけの査定では金額に偏りが出る場合もあるため、複数社の査定額と根拠を比べると、兄弟間で分配額を話し合いやすくなります。

メリット デメリット
  • 金額ベースで公平性を保ちやすい
  • 管理責任や共有名義のリスクを避けられる
  • 感情的な対立が起きにくい
  • 居住している相続人がいる場合、立ち退きの合意が必要
  • 売却までに時間がかかる場合がある
  • 譲渡所得税が発生する可能性がある

売却して清算する方法は分け方を金額で示せるので、不公平感を減らしやすい選択です。

査定額は売却保証額ではないため、複数社の結果をもとに価格帯や売却時期、退去条件を兄弟全員で合意してから進めましょう。

②代償金で単独取得し、清算する

誰かが住み続けたい場合は、1人が不動産を取得し、他の兄弟へ代償金を払います。

「実家を守りたい」「売りたくない」場合は特定の兄弟が代償金を払えば、不動産の価値を損なわずに維持できるでしょう。

メリット デメリット
  • 不動産をそのまま活用できる
  • 共有名義による管理の煩雑さや対立を避けられる
  • 感情面でも納得を得やすい
  • 取得者に十分な資金力が必要
  • 金融機関からの借入れが必要になる場合がある
  • 不動産評価額について合意が必要

代償分割では、不動産評価額と代償金の支払い方法を先に決めます。

取得者に現預金がない場合は分割払い・借入れ・売却への切り替えも含め、査定書や合意内容を書面で残しましょう。

③共有状態を解消する手続きを進める

兄弟間で揉めている原因が共有状態の場合は、解消手続きを進めましょう。

共有名義のまま放置すると、売却、賃貸、改築、次の相続で権利者が増え、解決がさらに難しくなるためです。

法務省では相続登記について、不動産を相続で取得したことを知った日から3年以内に申請する必要があると案内しています。(参考:法務省「相続登記の申請義務化に関するQ&A」

共有状態を放置すると次の相続で権利者が増える場合があるため、名義や持分は早めに見ておきましょう。

共有状態を解消する方法
  • 持分を他の共有者に売却または交換して単独名義にする
  • 自分の持分を放棄する
  • 裁判所に「持分分割訴訟」を申し立てて解消する

民法256条では、各共有者はいつでも共有物の分割を請求できると定められています。(参考:e-Gov法令検索「民法第256条」

共有状態を続ける場合は売却条件や費用負担を決め、合意できなければ弁護士や司法書士へ相談しましょう。

④家庭裁判所の遺産分割調停を利用する

兄弟同士での話し合いが揉めた場合には、家庭裁判所の「遺産分割調停」の利用を検討しましょう。

裁判所は相続人間で遺産分割の話し合いがつかない場合、家庭裁判所の調停または審判を利用できると案内しています。(参考:裁判所「遺産分割調停」

調停では当事者双方の事情や資料をもとに、調停委員を交えて争点を分けながら合意を目指すのが特徴です。

不動産の取得者、売却可否、評価額、代償金で意見が割れている場合は、調停前に資料をまとめておきましょう。

⑤弁護士を通じて交渉・訴訟を行う

寄与分・特別受益・共有状態をめぐる対立が強い場合は、弁護士を通じた交渉や訴訟を考えましょう。

民法258条では、共有物の分割について協議が調わない場合、裁判所に分割を請求できると定められています。(参考:e-Gov法令検索「民法第258条」

弁護士に依頼すると兄弟との直接交渉を避けながら、証拠や法的主張を整えられえるでしょう。

段階 形態 特徴
第1段階:協議 当事者同士の話し合い 自由度が高い一方で、感情的になりやすく決裂するケースもある。
第2段階:調停 裁判所の仲介 調停委員が間に入り話し合いを進める。双方の合意がなければ成立しない。
第3段階:訴訟 裁判所による判決 証拠に基づき、裁判官が強制力のある判断を下す。

寄与分、特別受益、評価額、持分の扱いで対立している場合は、早めに弁護士へ相談すると争点を分けやすくなります。

手続き名 概要 注意点
遺産分割審判 家庭裁判所が遺産の分け方を判断 当事者の意向に関係なく強制力がある
持分分割請求 不動産の共有持分を分割・換価する請求 協議が不調なら、訴訟や競売に進む
強制競売 裁判所を通じて不動産を売却し現金化 市場価格より大幅に安くなる場合がある
寄与分・特別受益の主張 他の相続人より多く・少なく受け取る根拠を主張 主張が認められなければ配分に反映されない

強制競売は市場価格より安くなる場合があり、訴訟や審判も時間と費用がかかります。

区分 内容 目安金額 負担する人
協議段階 専門家相談料 0〜1万円/回 相談者
調停 申立手数料
(収入印紙)
数千円 申立人
調停 郵券代 数千円〜1万円程度 申立人
弁護士費用 着手金 20万〜50万円程度 依頼者
弁護士費用 成功報酬 経済的利益の10〜20% 依頼者
訴訟費用 印紙代 数万円〜 原告
不動産鑑定 鑑定評価書 20万〜50万円 原則申立側

訴訟の費用は専門家相談で0〜1万円弁護士費用は着手金20万〜50万円成功報酬10〜20%が相場です。

その他裁判所に納める印紙代などの諸経費がかかるため、売却、調停、訴訟のどこまで進めるかを弁護士に確認しましょう。

相続不動産で兄弟が揉めないための対策

相続不動産で兄弟が揉めないためには、遺言書の作成など生前に法的な意思表示をしておきます。

兄弟間で揉める原因は法律で定められた「法定相続分」と個人が抱く「個別の事情や期待」にずれがあるためです。

遺言書があれば法定相続分より優先され、話し合いの長期化を防止できるでしょう。

生前に法的な遺言書を作成しておく

兄弟が揉めるトラブルを防ぐには、親が生前に法的効力のある遺言書を残すのが重要です。

不動産は現物分割が難しいため、誰が引き継ぐかを明示しておくと相続人同士の対立を抑えやすくなるでしょう。

遺言書には自筆で書く「自筆証書遺言」と、公証役場で作成する「公正証書遺言」があります。

項目 自筆証書遺言(一般) 公正証書遺言
検認の要否 必要 不要
執行のスピード 遅い 早い
開封の制限 勝手に開けると過料の対象 制限なし

公正証書遺言書は偽造リスクが低く、家庭裁判所の検認も不要です。

遺言書には維持管理費の負担や、仏壇など不動産に付随する項目も併せて記載しておきましょう。

相続前に不動産を現金化しておく

兄弟間の公平な分割のために、相続前に不動産を売却し現金化しておくのも効果的です。

不動産は物理的に分けるのが困難なため、現金化しておくと兄弟間の不公平感を排除しやすくなるでしょう。

財産の形 分割のしやすさ 想定される課題
不動産(自宅・土地) 低い 共有化、代償金問題、売却合意が必要
現金 高い 法定相続分どおりに即分配可能

相続前に売却しておくと、手数料を差し引いた手取り額が確定する点もメリットです。

主観的な期待値でなく、客観的な数字で話し合えるため不公平感なく納得した相続が叶いやすくなります。

代償金を準備する

相続不動産を維持活用したい場合は、事前に代償金を準備しておくのも有効です。

事前に現金の準備ができていれば代償分割が選択肢に入り、不公平感なく遺産分割協議が行える可能性があります。

民法第900条では、各相続人に「法定相続分」が定められていますが、不動産は現金のように分けられないためです。

相続人の組み合わせ 配偶者の取り分 子・父母・兄弟姉妹の取り分
配偶者と子 1/2 1/2(子が複数なら等分)
配偶者と直系尊属(親) 2/3 1/3(複数なら等分)
配偶者と兄弟姉妹 3/4 1/4(複数なら等分)

ただし相続人の一人が事前に現金を準備していれば、代償分割の選択が可能になります。

兄弟間での揉めないためにも、事前に代償金となる資金を準備しておきましょう。

注意

代償金の額は不動産の評価額に基づいて算出してください。

家族で財産目録を共有し、情報を共有する

生前に家族で財産目録を共有し、全体像や情報を共有しておきましょう。

相続人は資産の実態が見えず、相続後の不公平感を感じたり兄弟間の不信や疑念を抱いたりする可能性があるためです。

全財産をリスト化し、通帳のコピーや固定資産評価証明書とともに情報共有すると、兄弟間での疑いや不信を排除しやすくなるでしょう。

項目 内容 備忘録としてのポイント
預貯金 銀行名、支店名、口座番号、残高 ネット銀行などは見落としやすいので注意
不動産 所在地、地番、固定資産税評価額 権利証の保管場所も併記する
有価証券 証券会社名、銘柄、数量 評価額は変動するため、基準日を決める
負債 借入金、未払税金、ローン マイナスの財産も隠さず共有する
その他 貴金属、車、書画骨董、保険金 受取人が指定されている生命保険も共有する

ネット銀行や生命保険の受取人指定など、見落としやすい項目も漏れなく開示するのがポイントです。

生前贈与や介護への貢献など、目に見えにくい寄与も含めた話し合いを行いましょう。

兄弟で不動産相続する場合の注意点

相続不動産 兄弟 揉める

兄弟で不動産を相続する場合、共有状態で長期間放置しないように注意が必要です。

注意点 起こりやすいトラブル 事前に決めること 相談先
共有名義 売却や修繕で同意が取れない 売却条件・管理方針 司法書士・弁護士
固定資産税 誰が払うかで揉める 負担割合・支払い方法 税理士・弁護士
維持管理費 修繕費の立替で揉める 支払い記録・精算方法 弁護士
相続登記 名義変更が進まず売却できない 登記期限・必要書類 司法書士
次の相続 相続人が増えて話し合いが難航する 早期売却・共有解消 弁護士・司法書士

共有名義の不動産は将来的な売却やリフォーム、日常の管理費用で共有者間の意見が割れると意思決定や費用分担が難航するリスクがあるでしょう。

また管理を怠り、近隣に迷惑をかけた場合には損害賠償責任も共有持分に応じて発生します。

兄弟で不動産を相続する場合は、可能な限り共有状態を避けるようにしてください。

共有名義のまま放置しない

兄弟で不動産相続をする際、共有名義のまま放置しないのが重要です。

共有名義の不動産は、売却・建て替え・賃貸などの意思決定の度に共有者全員の同意が原則必要とされています。

各共有者は、他の共有者の同意を得なければ、共有物について変更(その形状又は効用の著しい変更を伴わないものを除く。次項において同じ。)を加えることができない。
引用:民法第251条第1項

兄弟の一方が亡くなる、または連絡が取れないと手続きが進まず、不動産が「塩漬け」状態になるリスクもあります。

共有者全員の許可が必要な行為
  • 不動産全体の売却・譲渡:物自体の所有権を失わせる行為
  • 建て替え(改築):既存の建物を壊す建て替えは「形状の著しい変更」
  • 大規模なリフォーム:構造を変えるような工事
  • 抵当権の設定:不動産全体を担保に入れる行為

また共有名義は一部分を勝手に持分が売却される可能性もあります。

やむを得ず共有名義になった場合も一時的な形と捉え、早期解消を検討してください。

固定資産税・維持管理費は全員で負担する必要がある

共有不動産の固定資産税や維持管理費は、持分割合に応じて共有者全員で負担しましょう。

民法第253条では、共有物の管理費用や公租公課は各共有者が持分割合で負担すると定められています。

各共有者は、その持分に応じ、管理の費用を支払い、その他共有物に関する公租公課その他の負担を負う。
引用:民法第253条

一部の相続人が支払わない場合は、他の共有者が立て替える形になり兄弟間での不満やトラブルのもとになるでしょう。

共有不動産で発生する支払い
  • 管理費用:修繕費、清掃費、保険料(火災保険など)
  • 公租公課:固定資産税や都市計画税
  • その他の負担:共有物の維持に必要なあらゆる経費

空き家や賃貸活用していない場合でも、年間数十万円の維持費が発生する場合があります。

兄弟間で費用トラブルを避けるためにも、事前に話し合ってルールを明文化しておくと安心です。

相続登記を期限内に行う

不動産を相続した場合、取得を知った日から3年以内に相続登記を行いましょう。

所有権の登記名義人について相続の開始があったときは、当該相続により所有権を取得した者は、自己のために相続の開始があったことを知り、かつ、当該所有権を取得したことを知った日から三年以内に、所有権の移転の登記を申請しなければならない。遺贈(相続人に対する遺贈に限る。)により所有権を取得した者も、同様とする。
引用:不動産登記法第76条の2第1項

2024年4月からの相続登記の義務化により、正当な理由なく放置した場合は10万円以下の過料対象になるおそれがあります。(参考:不動産登記法第164条第1項

また未登記の不動産は名義変更ができず、不動産の売却や譲渡、担保提供など一切の処分行為が行えません。

数世代にわたり名義変更がされていない場合、相続人が数十人に膨れ上がる可能性もあります。

2024年4月の制度開始前に発生していた未登記も遡って法律が適用されるため、早めの対処を行いましょう。

相続不動産で兄弟が揉める際によくあるQ&A

相続不動産で兄弟が揉める場合は、共有名義、居住者、評価額、費用負担を先に確認しましょう。

不動産は現金のように分けられないため、売却するか、誰かが取得するか、共有を続けるかで意見が分かれやすいです。

裁判所は、相続人間で遺産分割の話し合いがつかない場合、家庭裁判所の調停または審判を利用できると案内しています。(参考:裁判所「遺産分割調停」

兄弟間だけで話がまとまらない場合は、評価額や費用負担を資料でそろえ、必要に応じて専門家へ相談しましょう。

共有名義の相続不動産は兄弟の同意なしで売却できる?

共有名義の相続不動産は、原則として兄弟の同意なしでは売却できません。

不動産が共有状態の場合、売却や担保設定などの処分行為には共有者全員の同意が必要です(参考:民法第251条第256条)。

自分の持分だけを売れる場合もありますが、第三者が共有者に入ると協議が難しくなるため、反対する兄弟がいるなら弁護士へ相談しましょう。

相続不動産を共有名義にすると何が問題?

共有名義にすると売却や修繕などで共有者の同意が必要になり、将来の管理でも揉めやすくなります。

共有名義で起きやすいトラブル
  • 売却したいが、一人が反対して売れない
  • 管理費や固定資産税を一部の共有者しか払わない
  • 持分を他人に売られて、見知らぬ第三者と共有者になってしまう
  • 子世代に相続され、相続人が数十人に増えて身動きが取れない

共有名義は一時的な対応にとどめ、売却や共有解消を早めに話し合いましょう。

詳しくは「共有名義のまま放置しない」も参考にしてください。

相続者の一人が住んでいる実家はどう扱われるの?

相続人の一人が実家に住んでいても、他の兄弟の相続権はなくなりません。

兄弟は持分に応じた代償金や売却代金を請求できるほか、明け渡しを求める権利もあるためです(参考:民法900条)。

同居していた相続人が実家を取得する場合は、兄弟全員で分け方を話し合い、代償金の支払いも検討します。

代償金の支払いが行われず、最終的に売却する場合は、退去時期、売却価格、固定資産税の負担を先に話し合いましょう。

相続不動産の査定額はどれを基準にすべき?

売却や代償金を話し合う場合は、実勢価格を基準にするのが一般的です。

相続不動産の査定では「何のために評価するのか」によって基準が異なります。

評価方法 概要 主な用途
路線価評価 国税庁が公表する相続税評価額 相続税の申告
固定資産税評価額 自治体が課税のために評価した額 登記・財産目録の参考、
税金の概算
不動産会社の査定額 市場価格をもとにした予測売却価格(無料) 売却・代償分割・
分割協議の参考値
不動産鑑定士の鑑定評価書 国家資格者による公正な市場価値の評価(有料) 調停・裁判の証拠

査定額は売却保証額ではないため、調停や裁判で争う場合は鑑定評価書の利用も検討しましょう。

相続放棄をすると不動産はどうなるの?

相続放棄をすると、不動産だけでなく預貯金など他の財産も相続できなくなります。

家庭裁判所への申述で成立し、相続人としての地位は最初から持たなかった扱いになるためです。(参考:民法第939条

放棄した不動産は次順位の相続人に引き継がれますが、全員が放棄した場合は国庫に帰属します。

相続放棄を検討する場合は、不動産だけでなく負債や預貯金も含め、期限内に専門家へ相談しましょう。

固定資産税や管理費を払っていない兄弟に、後から請求できる?

固定資産税や管理費を立て替えた場合、持分割合に応じて請求できる可能性があります。

民法253条では、各共有者は持分に応じて共有物の管理費用や負担を負うと定められているためです。(参考:e-Gov法令検索「民法第253条」

各共有者は、その持分に応じ、管理の費用を支払い、その他共有物に関する負担を負う。
引用:民法第253条

請求時は納付書や領収書、振込記録で立替額を示し、負担割合で揉めたら弁護士へ相談しましょう。

兄弟と連絡が取れない場合の対処法は?

兄弟と連絡が取れない場合は、まず戸籍附票などで住所を確認します。

相続人全員の合意が必要なため、連絡が取れない兄弟がいる場合は、弁護士や司法書士を通じて住所調査や連絡を進めましょう。

所在不明や生死不明の場合は、不在者財産管理人や失踪宣告など、家庭裁判所の手続きも検討してください。

状況 対処法
一時的に音信不通 弁護士や司法書士を通じて連絡・住所調査
所在不明
(長期不通)
家庭裁判所に「不在者財産管理人」を申立て(参考:民法第25条
生死不明 「失踪宣告」を申立てて相続人から除外(参考:民法第30条
協議に応じない 遺産分割調停 → 不成立なら審判へ(参考:家事事件手続法第270条

相続不動産で兄弟が揉めそうな場合は早めに専門家へ相談しよう

相続不動産で兄弟が揉めそうな場合は、専門家へ早めに相談しましょう。

相続不動産の問題は判断を先延ばしにするほど兄弟間の関係修復が難しくなるためです。

専門家 主な役割
不動産会社 不動産の査定、売却サポート
司法書士 相続登記、名義変更手続き
税理士 相続税の評価・申告
弁護士 遺産分割協議、調停・訴訟対応

「専門家に頼むとお金がかかる」と考えがちですが、実際には兄弟間で揉めて遺産分割裁判に発展する方が時間や費用、精神的負担も大きくなります。

相続不動産で兄弟の意見が分かれている場合は、売却を前提に進める前に、不動産の評価額をそろえることが先決です。

複数社の査定額を比べると売却して現金で分けるか、誰かが取得して代償金を支払うかを話し合いやすくなるでしょう。

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